木材は、鉄などと異なり生産にエネルギーを消費しない森の自然が工場の未来的な材料である。日本の木材資源は、戦後の復興期に行われた植林の蓄積で、木材の成長量は木材の需要を大きく上回っており、今後数十年の間に全国の森林が樹齢100年を超える。


簡易架線による集材と、太い木から集材する林業

 大型機械と大型林道による林業は緩斜面にしか適用できない。中程度以上、急斜面の人工林は、集材が難しく生産林に適さないとされ、国の助成制度は広葉樹の混交林に変え天然林に戻す方針になっている。


 大型機械により皆伐される森林の3,4割しか植林されておらず禿山のまま放置され、各地で大規模な土石流の原因になっている。国産材の自給率を上げようと無理し国土の荒廃を招いている。近年の再造林には、鹿による苗木や樹皮の食害の困難さがある。下草がなくなり土壌が損なわれる。柵など防護の費用も大きい。一方自然の実生による若木は食害が少ない。

 中程度以上、急斜面には、架線による集材が適している。簡易架線集材(片端を接地)は比較的安全で安価に集材ができる。

 

 針葉樹は密に植えて競わせると真っ直ぐで元口と末口の差が少ないよい木材になる。先に太くなる木は目が粗い。

 目粗な太い木を除くと隣にあった同じ樹齢だが年輪の細かい細い木が育ち始め、目が密な価値ある材木になる。杉は自然に枝が落ち枝打ちの必要がない。

 

 太い木から伐採していくと、植林や下草刈りの手間をかけずに長い期間にわたり木材を生産していくことができ、劣性間伐を行い柱が取れるようになったらすぐに皆伐する方法に比べ何倍もの収益が得られる。

 大型機械による柱梁中心の林業ではなく、美麗な板材、造作材を作る林業を行う。太い木を選別してこまめに集材するには、架線を少しの手間で張り換えていく簡易架線の方法が適していて費用も少ない。

 オーストリアの森林は日本に似て急峻で、簡易架線集材の方法が発達している。農業用のトラクタに油圧ウインチを取り付けて農家の人たちが冬期に林業を行なっている。